峡《つがるかいきょう》をみんなと船で渡《わた》ったらどんなに嬉《うれ》しいだろう。
[#ここで字下げ終わり]
五月十日 今日もだめだ。
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五月十一日 日曜 曇《くもり》 午前は母や祖母《そぼ》といっしょに田打《たう》ちをした。午后《ごご》はうちのひば垣《がき》をはさんだ。何だか修学旅行《しゅうがくりょこう》の話が出てから家中へんになってしまった。僕はもう行かなくてもいい。行かなくてもいいから学校ではあと授業《じゅぎょう》の時間に行く人を調《しら》べたり旅行の話をしたりしなければいいのだ。
北海道なんか何だ。ぼくは今に働《はたら》いて自分で金をもうけてどこへでも行くんだ。ブラジルへでも行ってみせる。
五月十二日、今日また人数を調べた。二十八人に四人足りなかった。みんなは僕《ぼく》だの斉藤君《さいとうくん》だの行かないので旅行が不成立《ふせいりつ》になると云《い》ってしきりに責《せ》めた。武田《たけだ》先生まで何だか変《へん》な顔をして僕に行けと云う。僕はほんとうにつらい。明后日《みょうごにち》までにすっかり決《き》まるのだ。夕方父
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