だけで何とも云わなかった。けれどもきっと父はやってくれるだろう。そしたら僕は大きな手帳《てちょう》へ二|冊《さつ》も書いて来て見せよう。
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五月七日
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今朝父へ学校からの手紙を渡してそれからいろいろ先生の云ったことを話そうとした。すると父は手紙を読んでしまってあとはなぜか大へんあたりに気兼《きが》ねしたようすで僕が半分しか云わないうちに止めてしまった。そしてよく相談《そうだん》するからと云った。祖母《そぼ》や母に気兼ねをしているのかもしれない。
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五月八日 行く人が大ぶあるようだ。けれどもうちでは誰《だれ》も何とも云わない。だから僕《ぼく》はずいぶんつらい。
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五月九日、
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三時間目に菊池《きくち》先生がまたいろいろ話された。行くときまった人はみんな面白《おもしろ》そうにして聞いていた。僕は頭が熱《あつ》くて痛《いた》くなった。ああ北海道、雑嚢《ざつのう》を下げてマントをぐるぐる捲《ま》いて肩《かた》にかけて津軽海
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