した。
「クと申します。」
「フ、フ、そうか、なぜこんなにしているんだ。」
「暗殺されるためです。」
「フ、フ、フ。そうか。それはかあいそうだ。よしよし、おれが引き受けてやろう。おれのうちへ来い。ちょうどおれのうちでは、子供が四人できて、それに家庭教師がなくて困っているところなんだ。来い。」
猫大将はのそのそ歩きだしました。
クねずみはこわごわあとについて行きました。猫のおうちはどうもそれは立派なもんでした。紫色の竹で編んであって中はわらや布きれでホクホクしていました。おまけにちゃあんとご飯を入れる道具さえあったのです。
そしてその中に、猫大将《ねこたいしょう》の子供が四人、やっと目をあいて、にゃあにゃあと鳴いておりました。
猫大将は子供らを一つずつなめてやってから言いました。
「お前たちはもう学問をしないといけない。ここへ先生をたのんで来たからな。よく習うんだよ。決して先生を食べてしまったりしてはいかんぞ。」
子供らはよろこんでニヤニヤ笑って口々に、
「おとうさん、ありがとう。きっと習うよ。先生を食べてしまったりしないよ。」と言いました。
クねずみはどうも思わず足がブルブ
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