ンレツ者。あるけ、早く。」と、捕り手のねずみは言いました。さあ、そこでクねずみはすっかり恐れ入ってしおしおと立ちあがりました。あっちからもこっちからもねずみがみんな集まって来て、
「どうもいい気味だね。いつでもエヘンエヘンと言ってばかりいたやつなんだ。」
「やっぱり分裂していたんだ。」
「あいつが死んだらほんとうにせいせいするだろうね。」というような声ばかりです。
 捕り手のねずみは、いよいよ白いたすきをかけて、暗殺のしたくをはじめました。
 その時みんなのうしろの方で、フウフウと言うひどい音が聞こえ、二つの目玉が火のように光って来ました。それは例の猫大将《ねこたいしょう》でした。
「ワーッ。」とねずみはみんなちりぢり四方に逃げました。
「逃がさんぞ。コラッ。」と猫大将はその一匹を追いかけましたが、もうせまいすきまへずうっと深くもぐり込んでしまったので、いくら猫大将が手をのばしてもとどきませんでした。
 猫大将は「チェッ。」と舌打ちをして戻って来ましたが、クねずみのただ一匹しばられて残っているのを見て、びっくりして言いました。
「貴様はなんと言うものだ。」クねずみはもう落ち着いて答えま
前へ 次へ
全13ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング