ルしました。
 猫大将が言いました。
「教えてやってくれ。おもに算術をな。」
「へい。しょう、しょう、承知いたしました。」とクねずみが答えました。
 猫大将はきげんよくニャーと鳴いてするりと向こうへ行ってしまいました。
 子供らが叫びました。
「先生、早く算術を教えてください。先生。早く。」
 クねずみはさあ、これはいよいよ教えないといかんと思いましたので、口早に言いました。
「一に一をたすと二です。」
「そうだよ。」子供らが言いました。
「一から一を引くとなんにもなくなります。」
「わかったよ。」
 子供らが叫びました。
「一に一をかけると一です。」
「きまってるよ。」と猫の子供らが目をりんと張ったまま答えました。
「一を一で割ると一です。」
「それでいいよ。」と猫の子供らがよろこんで叫びました。そこでクねずみはすっかりのぼせてしまいました。
「一に二をたすと三です。」
「合ってるよ。」
「一から二を引くと……」と言おうとしてクねずみは、はっとつまってしまいました。
 すると猫の子供らは一度に叫びました。
「一から二は引かれないよ。」
 クねずみはあんまり猫の子供らがかしこいので、す
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