ニ思われました。
けれどもこの時は早くも高原の夜は明けるらしかったのです。
それは空気の中に何かしらそらぞらしい硝子《ガラス》の分子のようなものが浮《うか》んできたのでもわかりましたが第一《だいいち》東の九つの小さな青い星で囲《かこ》まれたそらの泉水《せんすい》のようなものが大へん光が弱くなりそこの空は早くも鋼青《こうせい》から天河石《てんがせき》[※9]の板《いた》に変《かわ》っていたことから実《じつ》にあきらかだったのです。
その冷たい桔梗色《ききょういろ》の底光《そこびか》りする空間を一人の天[※10]が翔《か》けているのを私は見ました。
(とうとうまぎれ込《こ》んだ、人の世界《せかい》のツェラ高原の空間から天の空間へふっとまぎれこんだのだ。)私は胸《むね》を躍《おど》らせながら斯《こ》う思いました。
天人はまっすぐに翔けているのでした。
(一瞬《いっしゅん》百|由旬《ゆじゅん》[※11]を飛んでいるぞ。けれども見ろ、少しも動《うご》いていない。少しも動かずに移《うつ》らずに変らずにたしかに一瞬百由旬ずつ翔けている。実にうまい。)私は斯うつぶやくように考えました。
天人の衣《こ
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