ナ鳴りました。まっくらでした。まっくらで少しうす赤かったのです。
 私はまた眼《め》を開《ひら》きました。
 いつの間にかすっかり夜になってそらはまるですきとおっていました。素敵《すてき》に灼《や》きをかけられてよく研《みが》かれた鋼鉄製《こうてつせい》の天の野原に銀河《ぎんが》の水は音なく流《なが》れ、鋼玉《こうぎょく》[※4]の小砂利《こじゃり》も光り岸《きし》の砂も一つぶずつ数えられたのです。
 またその桔梗《ききょう》いろの冷《つめ》たい天盤《てんばん》には金剛石《こんごうせき》[※5]の劈開片《へきかいへん》[※6]や青宝玉《せいほうぎょく》[※7]の尖《とが》った粒やあるいはまるでけむりの草のたねほどの黄水晶《きずいしょう》[※8]のかけらまでごく精巧《せいこう》のピンセットできちんとひろわれきれいにちりばめられそれはめいめい勝手《かって》に呼吸《こきゅう》し勝手にぷりぷりふるえました。
 私はまた足もとの砂を見ましたらその砂粒の中にも黄いろや青や小さな火がちらちらまたたいているのでした。恐《おそ》らくはそのツェラ高原の過冷却湖畔《かれいきゃくこはん》も天の銀河の一部《いちぶ》
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