インドラ[※1]の網《あみ》
宮沢賢治

[表記について]
●底本に従い、ルビは小学校1・2年の学習配当漢字を除き、すべての漢字につけた。ただし、本テキスト中では、初出のみにつける方法とした。
●ルビは「《ルビ》」の形式で処理した。
●[※1〜17]は、入力者の補注を示す。注はファイルの末尾にまとめた。
●ルビのない熟語(漢字)にルビのある熟語(漢字)が続く場合は、「|」の区切り線を入れた。
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 そのとき私は大へんひどく疲《つか》れていてたしか風と草穂《くさぼ》との底《そこ》に倒《たお》れていたのだとおもいます。
 その秋風の昏倒《こんとう》の中で私は私の錫《すず》いろの影法師《かげぼうし》にずいぶん馬鹿《ばか》ていねいな別《わか》れの挨拶《あいさつ》をやっていました。
 そしてただひとり暗《くら》いこけももの敷物《カアペット》を踏《ふ》んでツェラ高原をあるいて行きました。
 こけももには赤い実《み》もついていたのです。
 白いそらが高原の上いっぱいに張《は》って高陵産《カオリンさん》[※2]の磁器《じき》よりもっと冷《つめ》たく白いのでした。
 稀薄《きはく》な空気がみん
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