らさせ大よろこびで髪《かみ》をぱちゃぱちゃやりながら野はらを飛《と》んであるきながら春が来た、春が来たをうたっているよ。ほんとうにもう、走ったりうたったり、飛びあがったりするがいい。ぼくたちはいまいそがしいんだよ。
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(コロナは八万三千十九
 ※[#ト音記号、53−8]‥‥‥
 ※[#ト音記号、53−9]‥‥‥                    )
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 砂土《すなつち》がやわらかい匂《におい》の息《いき》をはいています。いままでやすんでいた虫どもが、ぼんやりといま眼《め》をさまし、しずかに息をするらしいのです。麦はつやつや光っています。雪の下からうまくとけて出て青い麦です。早く走って行こう、かけさえしたらすぐに麦は吸《す》い込《こ》むのだ。
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(コロナは八万三千十九)
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 わたくしたちが柄杓《ひしゃく》で肥《こえ》を麦にかければ、水はどうしてそんなにまだ力も入れないうちに水銀《すいぎん》のように青く光り、たまになって麦の上に飛びだすのでしょう、また砂土がどうしてあんなにのどの乾《かわ》いた子
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