いな。」
楽長「冗談ぢゃない、猫のダンスなんて。」
山〔猫博士〕「やれ、〔〕やれ、やらんか。」
(オーケストラはじまる)
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みんなコップをおいて踊る。キュステも入る。山猫博士、調子はづれの声でオーケストラに合せながら、みんなの間を邪魔するやうに歩きまはる。猫の声の時はねあがる。近くのものにげる。ファゼロ立って口笛を吹く。衣裳係、帰って来る。キュステの脚絆解ける〔。〕誰かが云ふ。
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「もしもし脚絆が解けましたよ。」
(キュステ列を離れる。衣裳係が走って行ってそれを巻きながら云ふ。)
「どうも困りますぜ、こんな工合ぢゃ。それでも衣裳の整はないのがあっちゃ、こっちの失態ですしね、えゝ、どうもこんなこっちゃ困りますぜ。」
(曲変る。みんな踊りをやめる。コンフェットウをなげるもの、盃をあげるもの。)
牧者(一歩出る)「レディスアン、ゼントルメン、わたくしが一つ唱ひます。ええと、楽長さん。フローゼントリーのふしを一つねがひませんかな。」
指揮者「フローゼントリーなんてそんな古くさいもの知りませんな。」
楽手たち「そんなもの古くさいな。」
牧者「困ったな
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