あ。」
鼓器楽手、「わたしは知ってますがね、どうも鼓器だけぢゃ仕方ないでせう。」
牧者、「あゝ、沢山です。ではどうか※[#「金+支」、344−16]でリヅムだけとって下さいませんか。」
鼓器楽手「リヅムといってたゞかうですよ。」
(鳴らす。みんな笑ふ)
牧者、「ああそれで結構です。(唱ふ)
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けさの六時ころ ワルトラワラの
峠をわたしが 越えやうとしたら
朝霧がそのときに ちゃうど消えかけて
一本の栗の木は 後光を出してゐた、
わたしはいたゞきの石にこしかけて
朝めしの堅パンを噛ぢりはじめたら
その栗の木がにはかに ゆすれだして
降りて来たのは 二疋の電気栗鼠
わたしは急いで……… 。」
[#ここで字下げ終わり]
山猫博士「おいおい間違っちゃいかんよ。」
牧者「何だって。」
山猫博士「今朝ワルトラワラの峠に、電気栗鼠の居た筈はない。それはカマイタチの間違ひだらう。も少し精密に観察して貰ひたいね。」
牧者「さうでしたか。」(首をちゞめてみんなの中に入る。)
山猫博士「今度は僕がうたふよ。
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つめくさの花の 咲く晩に
ポランの広場の
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