ろう。)といっています。タネリは、俄《にわ》かにこわくなって、いちもくさんに遁《に》げ出しました。
しばらく走って、やっと気がついてとまってみると、すぐ目の前に、四本の栗《くり》が立っていて、その一本の梢《こずえ》には、黄金《きん》いろをした、やどり木の立派なまりがついていました。タネリは、やどり木に何か云おうとしましたが、あんまり走って、胸がどかどかふいごのようで、どうしてもものが云えませんでした。早く息をみんな吐いてしまおうと思って、青ぞらへ高く、ほうと叫んでも、まだなおりませんでした。藤蔓を一つまみ噛んでみても、まだなおりませんでした。そこでこんどはふっと吐き出してみましたら、ようやく叫べるようになりました。
「栗の木 死んだ、何して死んだ、
子どもにあたまを食われて死んだ。」
すると上の方で、やどりぎが、ちらっと笑ったようでした。タネリは、面白《おもしろ》がって節をつけてまた叫びました。
「栗の木食って 栗の木死んで
かけすが食って 子どもが死んで
夜鷹《よだか》が食って かけすが死んで
鷹は高くへ飛んでった。」
やどりぎが、上でべそをかいたようなので、タネリは
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