タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)叩《たた》いて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|束《たば》もって

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ながね[#「ながね」に傍点]
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 ホロタイタネリは、小屋の出口で、でまかせのうたをうたいながら、何か細かくむしったものを、ばたばたばたばた、棒で叩《たた》いて居《お》りました。
「山のうえから、青い藤蔓《ふじつる》とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 崖《がけ》のうえから、赤い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 森のなかから、白い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 洞《ほら》のなかから、黒い藤蔓とってきた
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 山のうえから、…」
 タネリが叩いているものは、冬中かかって凍《こお》らして、こまかく裂《さ》いた藤蔓でした。
「山のうえから、青いけむりがふきだした
  …西風ゴスケに北風カスケ…
 崖のうえから、赤いけむりがふきだした
  …西風ゴスケに
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