た。それからその人は炭俵を馬につけはじめました。二人は入口に出て見ました。
 馬はもりもりかひばをたべてそのたてがみは茶色でばさばさしその眼は大きくて眼の中にはさまざまのをかしな器械が見えて大へんに気の毒に思はれました。
 お父さんが二人に言ひました。
「そいでぁうなだ、この人さ随《つ》ぃで家さ戻れ。この人ぁ楢鼻《ならはな》まで行がはんて。今度の土曜日に天気ぁ好がったら又おれぁ迎ぃに行がはんてなぃ。」
 あしたは月曜日ですから二人とも学校へ出るために家へ帰らなければならないのでした。
「そだら行がんす。」一郎が云ひました。
「うん、それがら家さ戻ったらお母《っか》さんさ、ついでの人さたのんで大きな方の鋸《のこぎり》をよごして呉《け》ろって云へやぃな、いゝが。忘れなよ。家まで丁度一時半かゞらは※[#小書き平仮名ん、246−2]てゆっくり行っても三時間半にあ戻れる。のどぁ乾ぃでも雪たべなやぃ。」
「うん。」楢夫《ならを》が答へました。楢夫はもうすっかり機嫌《きげん》を直してピョンピョン跳んだりしてゐました。
 馬をひいた人は炭俵をすっかり馬につけてつなを馬のせなかで結んでから
「さ、そいで
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