ひかりの素足
宮沢賢治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)萱《かや》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)口|漱《すす》げ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)今朝方《けさかだ》だ※[#小書き平仮名た、240−7]
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一、山小屋
鳥の声があんまりやかましいので一郎は眼をさましました。
もうすっかり夜があけてゐたのです。
小屋の隅から三本の青い日光の棒が斜めにまっすぐに兄弟の頭の上を越して向ふの萱《かや》の壁の山刀やはむばきを照らしてゐました。
土間のまん中では榾《ほだ》が赤く燃えてゐました。日光の棒もそのけむりのために青く見え、またそのけむりはいろいろなかたちになってついついとその光の棒の中を通って行くのでした。
「ほう、すっかり夜ぁ明げだ。」一郎はひとりごとを云《い》ひながら弟の楢夫《ならを》の方に向き直りました。楢夫の顔はりんごのやうに赤く口をすこしあいてまだすやすや睡《ねむ》って居ました。白い歯が少しばか
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