こまでつづくのかはては孔雀石《くじゃくいし》の色に何条もの美しい縞《しま》になり、その上には蜃気楼《しんきろう》のやうにそしてもっとはっきりと沢山の立派な木や建物がじっと浮んでゐたのです。それらの建物はずうっと遠くにあったのですけれども見上げるばかりに高く青や白びかりの屋根を持ったり虹《にじ》のやうないろの幡《はた》が垂れたり、一つの建物から一つの建物へ空中に真珠のやうに光る欄干《らんかん》のついた橋廊がかかったり高い塔はたくさんの鈴や飾り網を掛けそのさきの棒はまっすぐに高くそらに立ちました。それらの建物はしんとして音なくそびえその影は実にはっきりと水面に落ちたのです。
 またたくさんの樹《き》が立ってゐました。それは全く宝石細工としか思はれませんでした。はんの木のやうなかたちでまっ青な樹もありました。楊《やなぎ》に似た木で白金のやうな小さな実になってゐるのもありました。みんなその葉がチラチラ光ってゆすれ互いにぶっつかり合って微妙な音をたてるのでした。
 それから空の方からはいろいろな楽器の音がさまざまのいろの光のこなと一所《いっしょ》に微《かす》かに降ってくるのでした。もっともっと愕
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