されだ。ああ欺《だま》されだ」と叫んでいました。
みなさん。こんな話は一体ほんとうでしょうか。どうせ昔のことですから誰《たれ》もよくわかりませんが多分|偽《うそ》ではないでしょうか。
どうしてって、私はその偽の方の話をも一つちゃんと知ってるんです。それはあんまりちかごろ起ったことでもうそれがうそなことは疑いもなにもありません。実はゆうべ起ったことなのです。
さあ、ご覧なさい。やはりあの大きな川の岸で、狐《きつね》の住んでいた処《ところ》から半町ばかり離れた所に平右衛門という人の家があります。
平右衛門は今年の春村会議員になりました。それですから今夜はそのお祝いで親類はみな呼ばれました。
もうみんな大よろこび、ワッハハ、アッハハ、よう、おらおととい町さ行ったら魚屋の店で章魚《たこ》といかとが立ちあがって喧嘩《けんか》した、ワッハハ、アッハハ、それはほんとか、それがらどうした、うん、かつおぶしが仲裁に入った、ワッハハ、アッハハ、それからどうした、ウン、するとかつおぶしがウウゥイ、ころは元禄《げんろく》十四年んん、おいおい、それは何だい、うん、なにさ、かつおぶしだもふしばがり、ワッ
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