て、だしぬけに号令をかけました。
「突貫」
楢夫は愕いてしまいました。こんな乱暴な演習は、今まで見たこともありません。それ所ではなく、小猿がみんな歯をむいて楢夫に走って来て、みんな小さな綱を出して、すばやくきりきり身体《からだ》中を縛《しば》ってしまいました。楢夫は余程《よほど》撲《なぐ》ってやろうと思いましたが、あんまりみんな小さいので、じつと我慢《がまん》をして居ました。
みんなは縛ってしまうと、互《たがい》に手をとりあって、きゃっきゃっと笑いました。
大将が、向うで、腹をかかえて笑いながら、剣をかざして、
「胴上《どうあ》げい、用意っ。」といいました。
楢夫は、草の上に倒れながら、横目で見ていますと、小猿は向うで、みんな六疋位ずつ、高い高い肩車《かたぐるま》をこしらえて、塔《とう》のようになり、それがあっちからもこっちからも集って、とうとう小猿の林のようなものができてしまいました。
それが、ずんずん、楢夫に進んで来て、沢山の手を出し、楢夫を上に引っ張りあげました。
楢夫は呆《あき》れて、小猿の列の上で、大将を見ていました。
大将は、ますます得意になって、爪立《つまだ
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