さるのこしかけ
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)楢夫《ならお》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三|疋《びき》の小猿
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 楢夫《ならお》は夕方、裏の大きな栗《くり》の木の下に行きました。その幹の、丁度楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。
 楢夫は、じっとそれを眺《なが》めて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰《こし》をかけるようなやつなら、すいぶん小さな猿《さる》だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張《いば》ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ。」
 そしたら、きのこの上に、ひょっこり三|疋《びき》の小猿があらわれて腰掛《こしか》けました。
 やっぱり、まん中のは、大将の軍服で、小さいながら勲章《くんしょう》も六つばかり提《さ》げています。両わきの小猿は、あまり小
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