た。
 けれども小猿は急にぶらぶらさせていた足をきちんとそろえておじぎをしました。そしていやに丁寧に云いました。
「楢夫さん。いや、どうか怒らないで下さい。私はいい所へお連れしようと思って、あなたのお年までお尋《たず》ねしたのです。どうです。おいでになりませんか。いやになったらすぐお帰りになったらいいでしょう。」
 家来の二疋の小猿も、一生けん命、眼《め》をパチパチさせて、楢夫を案内するようにまごころを見せましたので、楢夫も一寸《ちょっと》行って見たくなりました。なあに、いやになったら、すぐ帰るだけだ。
「うん。行ってもいい。しかしお前らはもう少し語《ことば》に気をつけないといかんぞ。」
 小猿の大将は、むやみに沢山《たくさん》うなずきながら、腰掛けの上に立ちあがりました。
 見ると、栗の木の三つのきのこの上に、三つの小さな入口ができていました。それから栗の木の根もとには、楢夫の入れる位の、四角な入口があります。小猿の大将は、自分の入口に一寸顔を入れて、それから振《ふ》り向いて、楢夫に申しました。
「只今《ただいま》、電燈を点《つ》けますからどうかそこからおはいり下さい。入口は少し狭《
前へ 次へ
全10ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング