七とうしやうは なまりのメタル
八とうしやうは ぶりきのメタル
九とうしやうは マツチのメタル
十とうしやうから百とうしやうまで
あるやらないやらわからぬメタル。」
柏《かしは》の木大王が機嫌を直してわははわははと笑ひました。
柏の木どもは大王を正面に大きな環《わ》をつくりました。
お月さまは、いまちやうど、水いろの着ものと取りかへたところでしたから、そこらは浅い水の底のやう、木のかげはうすく網になつて地に落ちました。
画《ゑ》かきは、赤いしやつぽもゆらゆら燃えて見え、まつすぐに立つて手帳をもち鉛筆をなめました。
「さあ、早くはじめるんだ。早いのは点がいゝよ。」
そこで小さな柏の木が、一本ひよいつと環のなかから飛びだして大王に礼をしました。
月のあかりがぱつと青くなりました。
「おまへのうたは題はなんだ。」画かきは尤《もつと》もらしく顔をしかめて云ひました。
「馬と兎《うさ》です。」
「よし、はじめ、」画かきは手帳に書いて云ひました。
「兎《うさぎ》のみゝはなが……。」
「ちよつと待つた。」画かきはとめました。「鉛筆が折れたんだ。ちよつと削るうち待つてくれ。」
そ
前へ
次へ
全18ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング