七とうしやうは なまりのメタル
 八とうしやうは ぶりきのメタル
 九とうしやうは マツチのメタル
 十とうしやうから百とうしやうまで
 あるやらないやらわからぬメタル。」
 柏《かしは》の木大王が機嫌を直してわははわははと笑ひました。
 柏の木どもは大王を正面に大きな環《わ》をつくりました。
 お月さまは、いまちやうど、水いろの着ものと取りかへたところでしたから、そこらは浅い水の底のやう、木のかげはうすく網になつて地に落ちました。
 画《ゑ》かきは、赤いしやつぽもゆらゆら燃えて見え、まつすぐに立つて手帳をもち鉛筆をなめました。
「さあ、早くはじめるんだ。早いのは点がいゝよ。」
 そこで小さな柏の木が、一本ひよいつと環のなかから飛びだして大王に礼をしました。
 月のあかりがぱつと青くなりました。
「おまへのうたは題はなんだ。」画かきは尤《もつと》もらしく顔をしかめて云ひました。
「馬と兎《うさ》です。」
「よし、はじめ、」画かきは手帳に書いて云ひました。
「兎《うさぎ》のみゝはなが……。」
「ちよつと待つた。」画かきはとめました。「鉛筆が折れたんだ。ちよつと削るうち待つてくれ。」
 そ
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