うまいうまい。よしよし。夏のをどりの第三夜。みんな順々にこゝに出て歌ふんだ。じぶんの文句でじぶんのふしで歌ふんだ。一等賞から九《く》等賞まではぼくが大きなメタルを書いて、明日《あした》枝にぶらさげてやる。」
清作もすつかり浮かれて云ひました。
「さあ来い。へたな方の一等から九等までは、あしたおれがスポンと切つて、こはいとこへ連れてつてやるぞ。」
すると柏《かしは》の木大王が怒りました。
「何を云ふか。無礼者。」
「何が無礼だ。もう九《く》本切るだけは、とうに山主の藤助《とうすけ》に酒を買つてあるんだ。」
「そんならおれにはなぜ買はんか。」
「買ふいはれがない。」
「いやある、沢山ある。」
「ない。」
画《ゑ》かきが顔をしかめて手をせはしく振つて云ひました。
「またはじまつた。まあぼくがいゝやうにするから歌をはじめよう。だんだん星も出てきた。いゝか、ぼくがうたふよ。賞品のうただよ。
一とうしやうは 白金メタル
二とうしやうは きんいろメタル
三とうしやうは すゐぎんメタル
四とうしやうは ニツケルメタル
五とうしやうは とたんのメタル
六とうしやうは にせがねメタル
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