つとあざ笑ひました。清作はどうも仕方ないといふやうな気がしてだまつて画かきについて行きました。
ところがどうも、どの木も画かきには機嫌《きげん》のいゝ顔をしますが、清作にはいやな顔を見せるのでした。
一本のごつごつした柏の木が、清作の通るとき、うすくらがりに、いきなり自分の脚をつき出して、つまづかせようとしましたが清作は、
「よつとしよ。」と云ひながらそれをはね越えました。
画《ゑ》かきは、
「どうかしたかい。」といつてちよつとふり向きましたが、またすぐ向ふを向いてどんどんあるいて行きました。
ちやうどそのとき風が来ましたので、林中の柏《かしは》の木はいつしよに、
「せらせらせら清作、せらせらせらばあ。」とうす気味のわるい声を出して清作をおどさうとしました。
ところが清作は却《かへ》つてじぶんで口をすてきに大きくして横の方へまげて
「へらへらへら清作、へらへらへら、ばばあ。」とどなりつけましたので、柏の木はみんな度ぎもをぬかれてしいんとなつてしまひました。画かきはあつはゝ、あつはゝとびつこのやうな笑ひかたをしました。
そして二人はずうつと木の間を通つて、柏の木大王のところに
前へ
次へ
全18ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング