つ赤な眼のくまが、じつに奇体に見えました。よほどの年老《としよ》りらしいのでした。
「今晩は、大王どの、また高貴の客人がた、今晩はちやうどわれわれの方でも、飛び方と握《つか》み裂き術との大試験であつたのぢやが、たゞいまやつと終りましたぢや。
 ついてはこれから聯合《れんがふ》で、大乱舞会をはじめてはどうぢやらう。あまりにもたへなるうたのしらべが、われらのまどゐのなかにまで響いて来たによつて、このやうにまかり出ましたのぢや。」
「たへなるうたのしらべだと、畜生。」清作が叫びました。
 柏《かしは》の木大王がきこえないふりをして大きくうなづきました。
「よろしうござる。しごく結構でござらう。いざ、早速とりはじめるといたさうか。」
「されば、」梟《ふくろふ》の大将はみんなの方に向いてまるで黒砂糖のやうな甘つたるい声でうたひました。
「からすかんざゑもんは
 くろいあたまをくうらりくらり、
 とんびとうざゑもんは
 あぶら一升でとうろりとろり、
 そのくらやみはふくろふの
 いさみにいさむものゝふが
 みゝずをつかむときなるぞ
 ねとりを襲ふときなるぞ。」
 ふくろふどもはもうみんなばかのやう
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