ましい。きさまら、なんだつてひとの酒のことなどおぼえてやがるんだ。」清作が飛び出さうとしましたら、画かきにしつかりつかまりました。
「第|九《く》とうしやう。マツチのメタル。さあ、次だ、次だ、出るんだよ。どしどし出るんだ。」
ところがみんなは、もうしんとしてしまつて、ひとりもでるものがありませんでした。
「これはいかん。でろ、でろ、みんなでないといかん。でろ。」画かきはどなりましたが、もうどうしても誰《たれ》も出ませんでした。
仕方なく画かきは、
「こんどはメタルのうんといゝやつを出すぞ。早く出ろ。」と云ひましたら、柏の木どもははじめてざわつとしました。
そのとき林の奥の方で、さらさらさらさら音がして、それから、
「のろづきおほん、のろづきおほん、
おほん、おほん、
ごぎのごぎのおほん、
おほん、おほん、」
とたくさんのふくろふどもが、お月さまのあかりに青じろくはねをひるがへしながら、するするするする出てきて、柏の木の頭の上や手の上、肩やむねにいちめんにとまりました。
立派な金モールをつけたふくろふの大将が、上手に音もたてないで飛んできて、柏の木大王の前に出ました。そのま
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