そうですよ。僕《ぼく》たちも一ぺん飛《と》んでみたいなあ」
「飛《と》べるどこじゃない。もう二か月お待《ま》ちなさい。いやでも飛《と》ばなくちゃなりません」
それから二か月めでした。私は御明神《ごみょうじん》へ行く途中《とちゅう》もう一ぺんそこへ寄《よ》ったのでした。
丘《おか》はすっかり緑《みどり》でほたるかずらの花が子供《こども》の青い瞳《ひとみ》のよう、小岩井《こいわい》の野原には牧草《ぼくそう》や燕麦《オート》がきんきん光っておりました。風はもう南から吹《ふ》いていました。
春の二つのうずのしゅげの花はすっかりふさふさした銀毛《ぎんもう》の房《ふさ》にかわっていました。野原のポプラの錫《すず》いろの葉《は》をちらちらひるがえし、ふもとの草が青い黄金《きん》のかがやきをあげますと、その二つのうずのしゅげの銀毛《ぎんもう》の房《ふさ》はぷるぷるふるえて今にも飛《と》び立ちそうでした。
そしてひばりがひくく丘《おか》の上を飛《と》んでやって来たのでした。
「今日は。いいお天気です。どうです。もう飛《と》ぶばかりでしょう」
「ええ、もう僕《ぼく》たち遠いとこへ行きますよ。
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