ます。けれどもまるで燃《も》えあがってまっ赤な時もあります」
 「はてな、お前たちの眼《め》にはそんなぐあいに見えるのかい」
 「いいえ、お日さまの光の降《ふ》る時なら誰《だれ》にだってまっ赤に見えるだろうと思います」
 「そうそう。もうわかったよ。お前たちはいつでも花をすかして見るのだから」
 「そしてあの葉《は》や茎《くき》だって立派《りっぱ》でしょう。やわらかな銀《ぎん》の糸が植《う》えてあるようでしょう。私たちの仲間《なかま》では誰《だれ》かが病気《びょうき》にかかったときはあの糸をほんのすこうしもらって来てしずかにからだをさすってやります」
 「そうかい。それで、結局《けっきょく》、お前たちはうずのしゅげは大すきなんだろう」
 「そうです」
 「よろしい。さよなら。気をつけておいで」
 この通りです。
 また向《む》こうの、黒いひのきの森の中のあき地に山男がいます。山男はお日さまに向《む》いて倒《たお》れた木に腰掛《こしか》けて何か鳥を引き裂《さ》いてたべようとしているらしいのですが、なぜあの黝《くろず》んだ黄金《きん》の眼玉《めだま》を地面《じめん》にじっと向《む》けている
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