中佐《ちゅうさ》どのにお目にかかる。それからおまえはうんと走って陸地測量部《りくちそくりょうぶ》まで行くんだ。そして二人ともこう言《い》うんだ。北緯《ほくい》二十五|度《ど》東経《とうけい》六|厘《りん》の処《ところ》に、目的《もくてき》のわからない大きな工事《こうじ》ができましたとな。二人とも言ってごらん」
「北緯《ほくい》二十五|度《ど》東経《とうけい》六|厘《りん》の処《ところ》に目的《もくてき》のわからない大きな工事《こうじ》ができました」
「そうだ。では早く。そのうち私は決《けっ》してここを離《はな》れないから」
蟻《あり》の子供《こども》らはいちもくさんにかけて行きます。
歩哨《ほしょう》は剣をかまえて、じっとそのまっしろな太い柱《はしら》の、大きな屋根《やね》のある工事をにらみつけています。
それはだんだん大きくなるようです。だいいち輪廓《りんかく》のぼんやり白く光ってぶるぶるぶるぶるふるえていることでもわかります。
にわかにぱっと暗《くら》くなり、そこらの苔《こけ》はぐらぐらゆれ、蟻《あり》の歩哨《ほしょう》は夢中《むちゅう》で頭をかかえました。眼《め》をひらい
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