|天《あま》の川《がは》の向うまであの日はお使ひに参つたところでございましたので、私が帰るのが遅いと、御主人様は大そう心配していらつしやいましたが、私が帰つて詳しくお話を致しますと、御主人様は大悦《おほよろ》こびで、それではその御礼に、おぢいさん、おばあさんに天の羽衣を織つて、御礼にあげなさいと、仰《おつしや》いました。そこで私が心をこめてこれを織りました。で、どうか十二月三十日の夜に、天の羽衣、鶴の羽衣と言つて、売つて歩いて下さいまし。その代金は御二人が生涯《しやうがい》たのしく、お楽に暮していかれるだけはございます。どうぞ随分とお身体《からだ》をお大事に、いのち長くお暮しなさい。」
鶴の美人はさう申しまして、この天の羽衣を渡して、立ち去りました。
と、二人は夢から醒めました。然《しか》し鶴の美人が手にもつてゐた巻物は確《たしか》にそこに置いてありました。
さて十二月三十日の夜になりますとお爺さんは鶴の美人に教はつたとほりに、
「天の羽衣、鶴の羽衣。」と、いつて売つて歩きました。
「天の羽衣とはどんなものか、一寸《ちよつと》見せなさい。」と言つて、見るものもありました。けれども
前へ
次へ
全14ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング