た。
「なるほどミトライユは有力な武器にはちがひない。けれどもプロシヤの武器もなか/\精鋭だから、油断はならないよ。」
ダンリ中尉は又もや肩をすぼめた。
「豚どもの大砲や小銃がなんになるものですか。奴等《やつら》と一緒に地獄へでもうせろだ!」
「いや、さう一がいにはいへないぞ。わしはよく調べて来たのだからね。敵を知り己を知ることは戦ひに勝つ秘訣《ひけつ》である――と東洋の兵法は教へてゐる。大ナポレオンの後をつぐ君等の名誉の勝利を維持して行くには、よく敵を知らなければいけない。」
「なに大丈夫だ! 我々にスナイドル銃がある。ナポレオン砲がある。おまけに精妙きはまりなきミトライユがある。」
「いや、プロシヤのモーゼル銃はスナイドル以上かも知れんぞ。もしそれクルツプ砲となると、その発射の速さといひ、弾のとゞく遠さといひ、又命中の正確さといひ、ナポレオン砲以上だ。ミトライユは結構だが、もつと照準をやさしくして、遠くまでとゞくやうにしなければ、完全とはいへない。」
「なに!」と、ダンリ中尉はたちまち眉をつり上げた。「君は仏軍を侮辱するか。」
「いや、わしは仏軍を常勝軍たらしめようと思ふからいふ
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