、ダンリ中尉か。久しぶりだね。私はしばらくプロシヤへ行つてゐたのでね。」
「プロシヤへ?」
 中尉は青い目を丸くして、肩をすぼめ、両手をパツと開いた。これはフランス人が軽蔑《けいべつ》の意味をあらはすときにいつもする身振である。
「ほう! 豚どもの仲間へ入つて行かれたのですか。豚小屋は臭くて仕方がありますまい。なあに、おつつけ我々があんな不潔な獣をやつつけて、きれいに掃除しますから、もう一度行かれるときには、もう臭くはありませんよ!」
 といつて、「ベルリンへ! ベルリンへ!」と、歌の文句のやうにつけ足した。
 上村少佐はこの青年将校の盛な意気には感心したが、あまりに敵を知らなさすぎるのに、あはれみの微笑がひとりでに浮かんでくるのだつた。
「ほう、えらい勢ひぢやな。そして君は戦争には行かないのか。」
「勿論《もちろん》、行きます。今、新編制の機関砲隊《ミトライユール》を訓練してゐるところで、もうぢき出かけます。あゝ愉快々々! 我々はまるで大鎌で野の草を苅《か》るやうに、プロシヤの豚どもを打殺してやれるわけだ!」
 上村少佐はこの言葉を聞くと、あまりにも口から出まかせに、少し腹が立つて来
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