ランスのものに比べると、砲架がたくみに出来てゐて、照準がたやすくて、上向きにする角度が大きいので、弾が遠くまでとどくのだつた。又小銃もいろ/\の点が改良されて、取扱《とりあつかひ》が便利にできてゐた。
「あゝ、気の毒だが、武器の上からだけ見れば、フランスはとてもプロシヤの敵ぢやない!」
 かう見ぬいた上村少佐は、ナポレオン三世皇帝がプロシヤに対して宣戦した当日、パリーへ帰りついたのだ。


    仏独武器くらべ

 いよ/\戦争が始つた。
「ベルリンへ! ベルリンへ!」といふ叫《さけび》はます/\盛んになつて、パリーの町々はわきかへる騒《さわぎ》であつた。仏軍はぞく/\国境さして出発する。ナポレオン三世は自らセダンに赴いて、軍を指揮した。
 或日《あるひ》のこと、上村少佐は射撃場へ行つて、小銃射撃を見てゐると、ふと後《うしろ》から少佐の肩をたゝく者があつた。ふりかへつて見ると、それは以前、少佐にミトライユを得意さうにみせたエミル・ダンリ中尉といふ若い士官であつた。
「少佐上村《マジユール・カミミユラ》! しばらくでしたね!」
 中尉は青年らしい元気のいゝ顔に笑を浮かべてゐた。
「おゝ
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