まはりを三べん廻《まは》つて、何やら口の中でわけの分らぬことを、ぶつ/\言ひました。
「さあ、言つてごらん。私《わたし》が今何を考へてゐるか。」と、猫はきゝました。
大男の雷様はぼんやりして、猫の顔を見上げてゐました。雷様はあんまり利口ではないのです。
「たぶん、おまいは、おれがこゝにぼんやり坐つてゐるのは、馬鹿《ばか》げてゐると思つてゐるんだらう。」
「えらい。たまげた。それぢや修業して物になる見こみは十分にある。私《わたし》はまだ、こんな利口な弟子を取つたことがない。」
「ぢやも一度やつてみようか。」
雷様は、自分が大へん利口だと思つたのです。
「よろしい。では、私《わたし》は今何を考へてゐるか当てゝごらん。」
雷様は、賢さうなふりをして、その小さな、馬鹿げた目で、ぼんやりと、虹猫の顔を見ました。
「ビフテキと玉葱《たまねぎ》。」と、雷様は突然言ひました。
「これはえらい。」と、猫はわざと驚いたやうにいつて、尻もちをつきました。
「すつかり当つた。どうしてそんなことが分るのだい。」
「いや、なにね、ふつと心に思ひついたゞけさ。」と雷様は、言ひました。
猫はまじめくさつて、
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