「あなたはその才をこれから育てあげて行かなけりやならんぜ。すばらしいものだ。」
「どうして育てるんだ。」と、雷様はきゝました。人の心をよむといふことは、大へん愉快なものだと思つたのでした。
「なんでもないさ。」と、猫は、もうしめたと思つたので、いよ/\出たら目を言ひました。「家《うち》へ行つて、二三時間、寝てゐなさい、それから、少しお菓子をたべて、又二三時間、寝るんだ。それから目がさめてからお茶を一ぱい、あつくして飲むんだよ。しかし、おとなしく、ぢつとしてゐないと、だめだよ。さうさへすれば、明日の朝、あなたはきつと人の心が、雑作なく読めるやうになるから。」
 雷様はすぐにも家《うち》へ走つて行きたいのでした。けれども、さすがに礼儀だけは忘れません。
「大きにありがたう。だがね、ニヤンプウ子先生、これを教へていたゞいたお礼には何を上げませうか。」
 七色の虹猫はしばらく考へてゐましたが、
「私《わたし》はちつとばかり、いなづまが欲しいから、ちよつぴりと下さい。」
 大男の雷様はポケツトに手を入れて、
「お安いことだ。それならこゝに一たばあるから、これを持つておいで。用があるときには、その
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