虹猫の話
宮原晃一郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)いつの頃《ころ》か

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|疋《ぴき》の猫

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 いつの頃《ころ》か、あるところに一|疋《ぴき》の猫《ねこ》がゐました。この猫はあたりまへの猫とはちがつた猫で、お伽《とぎ》の国から来たものでした。お伽の国の猫は毛色がまつたく別でした。まづその鼻の色は菫《すみれ》の色をしてゐます。それに目玉はあゐ、耳朶《みみたぶ》はうす青、前足はみどり、胴体は黄《きい》、うしろ足は橙色《オレンヂ》で、尾は赤です。ですから、ちやうど、虹《にじ》のやうに七色をしたふしぎな猫でした。
 その虹猫《にじねこ》は、いろ/\と、ふしぎな冒険をしました。次にお話するのはやつぱり、そのうちの一つです。

 ある日、七色の虹猫は日向ぼつこをしてゐました。すると、何だか、たいくつで仕方がなくなりました。といふのは、近頃、お伽の国は天下太平で、何事もなかつたからです。

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