「どうも、かういつも、あつけらかんとして遊んでばかりゐては、体が悪くなつていけない。」と、猫は考へました。「どれ、一つ、そこいらに出かけて、冒険でもやらうか知ら。」
 そこで、猫は、戸口にはり札をしました。
「二三日、留守をしますから、郵便や小包が、もし留守中にきましたら、どうか、煙突の中に投げこんで置いて下さい。――郵便屋さんへ。」
 それから、ちよつとした荷物をこしらへて、それを尻尾《しつぽ》のさきにつゝかけ、えつちやら、おつちやら、お伽の国境までやつて来ました。すると、ちやうど、そこに雲がむく/\と起つて来ました。
「どれ一つ、雲の人たちのところに、顔出ししてみようかな。」
 猫はひとりごとを言ひながら、雲の土手をのぼり始めました。
 雲の国に住まつてゐる人たちは、たいへん愉快な人たちでした。仕事といつては、べつだん何にもしないのですが、それでも、怠けてゐるからつて、世の中が面白くないわけでもないのです。そして、みんな立派な雲の御殿に住まつてゐますが、御殿は地球から見える方よりも、見えない側がかへつて大へん美しいのです。
 雲の人たちは、とき/″\、一しよに、真珠色の馬車をはしら
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