ました。「私《わたし》のこの袋を見なさい。この中に魔術の種子《たね》がはいつてゐるんだよ。雷さん、わたしは前から、あなたのことを、ちやんと知つてゐるんだよ。あなたはえらい有名な人なんだから。」
 雷様はさう言はれると、少し得意になりきげんを直しかけました。けれども、足をいためたので、まだ幾分怒つてゐます。
「ふん、おれは魔術師なんてものを大してえらいとは思つちやゐない。お前一たい、何ができるのだ。」
「私《わたし》はあなたの心の中が分るのだ。」
「ふゝん、さうか。ぢや、今、おれは何を考へてゐるのか、当てゝみなさい」
「そんなことはわけはない。あなたは、自分の足をいためたことを怒つて、あなたの底豆をけとばしたやつを掴《つかま》へてやらうと思つてゐるんぢやないか。」
 七色の虹猫は、前に燕《つばめ》から、ちやんとそれを聞いて、知つてゐたのです。
 雷様はびつくりしました。
「うん、こいつは驚いた。お前、その術をおれに教へてくれないか。」
「それはむろん教へてあげよう。が、まづ、見こみがあるかないか試験をしてからでないと、いけない。お坐んなさい。」
 雷様はそこに坐りました。七色の虹猫はその
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