た。
 さま/″\変な、恐ろしい形をしたものが壁にかゝつてゐたり、戸棚《とだな》の中にしまつてあつたりして、床の上にも、テイブルの上にも魔術の本が山のやうにつみ重ねてありました。
 魔法つかひは腰に大きな鍵《かぎ》のたばをぶら下げて、火にかけたまつ黒な鍋《なべ》の中に、何やらグチヤ/\煮え立つてゐるものを、しきりにかき廻《まは》してゐました。虹猫がさつき煙突からのぼるのを見た煙はそこから来るのでした。
 炉《ゐろり》の火の光りで、鍵につけた札に書いてある字が読めました。
 金の箱、銀の箱、宝石の箱、大女の室《へや》、牢屋《らうや》、大女の庭。
 そんな札が鍵についてゐましたから、虹猫はよつぽど事情が分つて来たやうに思ひましたが、もつとよく見きはめてやらうと思つたので小さな袋を取上げて、こつそりお城の、別な端に行つて、そこの塔の下に腰をおろしました。そして又れいの千里眼のお水を目にぬりつけました。
 今度その目にうつつたのは、子供たちの一ぱい集つてゐる大きな室《へや》でした。
 子供たちはいそがしさうに仕事をしてゐました。或者は妙な草をより分けてゐる。或者は重い石で、何だか変なものをつき
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