くだいてゐる。又別なものはえたいの知れない水薬を、この瓶から、あの瓶へとおづ/\した手つきではかつて、一てき/\とうつしてゐます。みんな、あをざめた顔をして疲れきつたやうに見えます。誰《たれ》一人として仕事をしながら笑つたりしやべつたりするものはありません。沈みきつて子供らしくもないのです。

 そのとき、ふと戸口が開きました。はいつて来たものがあります。それはほかでもない、大女でした。けれども、虹猫は二度びつくりしました。なぜかつて言へば、大女は、せいはすばらしく高かつたに相違ありません。けれどもその顔は決して恐くはなくつて、かへつて美しく、愛嬌《あいけう》があつて、黄金色《こがねいろ》の髪をしてゐました。
 大女がそこにあらはれるが早いか、子供たちはみんな走つてそのそばへ行くのが、ちやうどお母さんでも来たやうに、嬉《うれ》しさうです。
 虹猫はもうぐづ/\してはをりません。すぐにマンドリンをとつて、弾き始めました。けれども、魔法つかひに聞かれると悪いと思つて、そんなに音高くは鳴らしません。しかし幸にも風が順に吹いてゐました、それに魔法つかひは、その魔法の仕度に一生けんめいだつたので
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