、土地の人たちには、何にも言ひませんでした。言つたからとて、どうすることもできるわけではなし、たゞ心配をするきりのことですから。
だから、うまい計略を考へるため、少し散歩してくるといつただけで出かけました。
虹猫は身がるに岩の出たけんそ[#「けんそ」に傍点]な道を上《あが》つたり下りたりして、とう/\お城の壁のま下まで来ました。
お城にはすばらしく大きな二つの石の塔が一方の端と、も一方の端とに、一つづゝ立つてゐて、その高い煙突からは、毒々しい、みどりやら、紫やら、黒やらの煙がもく/\とあがつてゐました。
「なるほど、あれは大女が恐ろしい魔法の薬をこしらへてゐるんだな。」と、虹猫はひとりごとを言ひました。
そこで塔の下のところに腰かけて、袋から千里眼のお水のはいつた小さな瓶《びん》を出して、それを目にぬつて、お城の中を見通さうとしました。すると、ふしぎなことには、お城の中にゐるのは大女ではなくつて、長いごましほ鬚《ひげ》の生えた、きたならしい魔法つかひの爺《ぢい》さんであることが分りました。頭には、ばかに高い帽子をかぶり、大きな炉《ゐろり》を前に、広い部屋の中に住まつてゐまし
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