開けません。
「おまへは誰《だれ》だ。何の用があつて来たんだ。」
「僕は旅の音楽師です。内にはいつて、一曲ひいてはいけませんか。」
 魔法つかひはうさん臭さうな目つきをして、「何だおまへ、その袋の中に入れてるものは。」と、きゝながら、足で袋をけりましたから、なかの稲妻が、ガラガラツと大きな音を立てました。
「これですか。」と、虹猫はそ知らぬ顔で答へました。
「これは珍らしい楽器です。だからあんな音を出します。これがなけりや、僕は歌がうたへません。」
「うん、さうか。ぢや一つそこでうたつてごらん。その上で中へ入れるか入れないか、きめるから。」
 虹猫はマンドリンをかき鳴らしてうたひました。
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青い草の上に、鵞鳥《がてう》が一羽、
くちばしが金で羽が銀、こんな美しい鳥は、
誰《たれ》もまだ見たことがない。
[#ここで字下げ終わり]
「うん、面白さうだ、うちにはいつて、あとをうたひなさい。」魔法つかひは、よろこんでうちへ虹猫を入れました。しめたツと、虹猫はいきなり袋をあけて、稲妻をはなしました。ピカ/\、ゴロ/\、大したさわぎです。虹猫は外套をぬぎすて、テイブルの上にと
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