。」と、虹猫はしばらくしてから言ひだしました。
「きれいなのができるよ。でも、色が白だから使へないね。」
 その時分には、やぶ薔薇は、妖精の国でも、ほかの国でも、みんな白ばかりだつたのです。
「まつたく、そのとほり。」と、虹猫はいひました。「ところでその白を赤にする工夫があるんだよ。マンドリンを一ちやう貸してくれないか。」
「えゝ、貸さう。」と、木精は走つて帰りましたが、間もなく、銀や、象牙《ざうげ》や、真珠貝などをちりばめた、美しいマンドリンを一ちやうもつて来ました。
「やあ、ありがたう。ぢや、三十分もしたら、君の入用な薔薇の花びらを、もつてくるから。」
 虹猫はさういつて、マンドリンを首にかけ、いそいで森の方へ出て行きました。

 ほどなく、虹猫は馬追ひ谷に来て、やぶ薔薇の爪《つめ》がとゞかないくらゐのところに腰をおろし、マンドリンの調子を合せて、次のやうな歌をふし面白くうたひました。

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かしの木は
天まで腕をのばす、
松の木は天まで頭をあげる
細い樺《かば》の木は
すつきりした貴婦人、
ポプラの姿のなよ/\しさ
だが一たい誰《だれ》だらう?
そこの、ちつぽ
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