けな、
いぢ悪は
誰だらう、あゝ誰だらう?
そこの背のひくい変てこな木は?
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虹猫が、これをうたひ終らないうちに、やぶ薔薇は、まつ赤になつて怒り出しました。立つてゐても、たまらなくなつたと見えて、体中を、ぶる/\ふるはせました。
虹猫はそつちへは目もくれないで、第二節をうたひました。
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楡《にれ》の木は王様のやうに立派だ、
どろの葉は踊つたり、歌つたり、
ぶなの奥さん、きれいな奥さん、
栗《くり》の電燈はぴつかぴか、
だが一たい、誰だらう?
その膝《ひざ》までもとゞかない、
頭が白くて、足曲り、
一たいどうしたわけなんだらう?
[#ここで字下げ終わり]
歌がすゝむにつれて、やぶ薔薇はます/\怒りました。虹猫は、
「一たいどうしたわけなんだらう。」
と、おしまひをうたふ時には、ほんとにいゝ声でした。節も面白かつたのです。
けれども、やぶ薔薇の方では、そんなことに気がつきはしません。たゞもう、かん/\火のやうに怒るものですから、花びらはだん/\と石竹色になりました。あんまり身をふるはせるものですから、おしまひには花びらが、まるで
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