まあ、腰をかけて、ゆつくりと話すことにしよう。」
 木精の頭はそは/\しながらも、いはれるとほりに腰をかけて、ねつ心に、虹猫の話すのを待ちました。が、いよ/\、望みが多くなつてきたと思つて、喜びました。
「君に一つ、きくことがある。」と、虹猫は申しました。「馬追《うまお》ひ谷《だに》のやぶ薔薇は大へんいぢ悪だつてことだが、ほんたうだらうか。」
「ほんたうとも。ほんたうとも。だれだつてあいつの傍《そば》に寄れはしないよ。ひどい奴さ。やぶ薔薇だつて中にはなか/\善《い》いのもゐる。けれども、あいつはたまらない。ちつとでも、すきがありや、すぐ引つ掻《か》くんだからね。それや悪いやつさ。」
「ぢや、も一つきくが」と、虹猫は言葉をつゞけました。「あの薔薇は、自分が、せいが低くつて、天までとゞくことができないので、それを大へん口惜しがつて、ひとをねたんでゐるつてことだが、ほんたうかい。」
「ほんたうだよ。いつもぶつ/\小言をいつたり、どなりちらしたり、近じよ近ぺん大迷惑なんだ。」
「ふむ。」といつて、虹猫は腕をくみ、しばらく何やら思案してゐました。
「やぶ薔薇の花びらで、妖精の靴がつくれるだらうか
前へ 次へ
全10ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング