す。

 虹猫が、二三日、木精の国に滞在してゐるうちに、或日、朝早く、木精の頭《かしら》が面会に来ました。それは大へんにこまつたことができたから、相談してみようと思つたのです。
 困つたことゝは、ほかでもありません。妖精の国の女王様から、薔薇色をした短靴《たんぐつ》が幾ダースも幾ダースも、註文がありました。女王様は、こんどの宴会に、自分の御殿にゐるものには、みんなお揃《そろ》ひで、薔薇色の短靴をはかせようと、思召《おぼしめ》したのです。それだのに、その宴会は、もうほんの三日の後に、迫つてゐました。
「やつてやれないことはないけれど。」と、木精の頭は言ひました。「材料をどうしたものだらうか。君も知つてゐるとほり、薔薇はまだ出ないし、石竹《せきちく》は近頃《ちかごろ》、むやみに註文があつたんで、すつかり使ひつくしてしまつたんだ。それに似寄りの染粉も、みんなになつてしまつたのだ。もう、薔薇色の革はちつとも持合せがないのに、すぐ取りかゝらなけりやならんのだ。そいつを造らせるうちには、日限が切れつちまふ。女王様のおきげんをそこねるのは恐しい、一たい、どうしたらいゝだらう。」

 虹猫は智慧《ちゑ
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