もうせん苔《ごけ》、水の泡《あわ》、草の葉の筋など、そのほか、数かぎりのない材料が使はれるのです。
さて、この着物ができあがると、鳥がそれをもつて、妖精のところへ行き、代りの註文を受取つてくるのです。
ごくとくべつの場合には、註文《ちゆうもん》をした妖精が寸法を合はせに来たり、服地やら、スタイルやらをえらびに、自分から出かけてくることもありますが、そんなことは、さう、たび/\ではありません。なぜかといふに、木精の縫つた服は、よくからだに合ひスタイルも見事だからです。
虹猫《にじねこ》は木精の国に行くことが、大へん好きでした。
虹猫は、木精の国では、美しい、ぶな[#「ぶな」に傍点]の木に住まつてゐました。朝日が、木の葉をとほして、射すときには、その小さなお家《うち》は、なんともいへない、可愛らしい薔薇色《ばらいろ》にそまつて、それはきれいに見えるのです。毎朝、小さな鳥が声をそろへて、歌をうたつて、虹猫に聞かせ、又夕方になると、いつも子守歌をうたつて、すや/\ねむらせてくれます。
小さな鳥どもは、虹猫を、大へん立派な、きれいな人だと思つてゐました。そしてそれはじつさいのことで
前へ
次へ
全10ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮原 晃一郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング