下に行くのですもの、大へんなちがひです。だから木精はだれもみな、春になるのを待ちどほしがつて、草が芽をふき、鳥がのどを鳴らして、春を知らせると、もう大よろこびなのです。
木精の国にはほかに動物はゐません。けれども虹猫は、古くから、この国に出入りして、おなじみですから、いつか雲の国に行つたと同様、かんげいされたのです。
木精は風がはりなたち[#「たち」に傍点]で、人は人、自分は自分といふ風で、他《ほか》の妖精を自分の国に住まはせません。それだからといつて、別だん、他の妖精と喧嘩《けんくわ》をするわけでもありません。いや/\、かへつて、みんなと仲好くしてゐます。さうして、木精は、音楽をよくしますけれど、そのおもな仕事は、妖精の着物をこしらへることなのです。
その着物といふのは、とても想像も及ばぬほど、小さな/\、微妙な織物で、いろ/\さま/″\な、美しい、価のたかい材料で出来てゐるのです。たとへば、金蜘蛛《きんぐも》、銀蜘蛛《ぎんぐも》といふ、とくべつな蜘蛛の糸はもちろんのこと、その外に月の光り、蚕からとつた、それは/\柔かい生糸、魔術の井戸水にひたして色のさめないやうにした花びら、
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