つたので、皇子は、この田舎のおぢいさんを尊い位の大納言とおまちがひになつたのでした。
扨《さ》ておぢいさんはそのまゝ田舎に戻《もど》つて、次の年今度は祇園祭《ぎをんまつり》を見物に又京都へ出てまゐりました。おぢいさんはあひ変らずその拾つた冠をかぶり、後手《うしろで》をしてあつちこつちを見物してあるきました。
祇園のお祭にはおみこしが出るばかりではありません。美しい美しい山車《だし》が出ます。之《これ》を見物に沢山な人が路《みち》の両側に垣《かき》をつくつてをります。おぢいさんもそのうちにまじつて、見物してゐますと、どういふものだか、山車がおぢいさんの前まで来ますと、ぴつたりと駐《とま》つてしまひました。
「おや/\どうしたのだらう、曳《ひ》いてゐる牛が疲れたからとまつたのか知ら。」と、おぢいさんは不思議におもつてをりました。けれども牛は金と銀の紙を貼《は》られた角をによきつと立て、眠たそうな眼《め》をパチ/\させ、長い涎《よだれ》をくり/\、のつそりとそこへ立つてをりますが、疲れたやうではありません。そのとき一人の男がおぢいさんの前へ来て、叮寧《ていねい》にお辞儀をして申しました、
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