いさんは独り言をいひながら、頭にそれをのせました。田舎のおぢいさんのことですから、それが大納言《だいなごん》の冠であることは知りません。たゞ頭にかぶるものとだけ知つてをりました。するとどこからか遠いところで、「大納言/\。」と呼ぶ子供の声が聞えました。おぢいさんは大納言が何だかもやはり知らないので、そこいらをうろ/\見てあるきますと、又「大納言/\。」といふ子供の声がしますので、振り返つてみますと、もう半分は焼け崩れた一つ御殿から、一人の子供がこちらを向いて「大納言/\。」と呼びながら手招きしてをりますから、「ハテな、大納言ちうは俺《おれ》のことだらうな。」と、気がついて、そこへ参りますと、子供はいきなり、
「背中を出せ。」と申しました。
で、ぢいさんは背中を向けますと、子供はおぶさりましたから、
「どつちへ行くんですか。」と、聞きますと、子供はその行先《いくさき》を申しましたので、おぢいさんはそこへ子供をおんぶして行き、それから又|他《ほか》のところを見てあるきました。
その子供は曩《さき》に申した皇子でありました。おぢいさんが拾つてかぶつた冠が大納言の位にゐるものがかぶるものだ
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