きませんでしたが、だん/\近くなつたので、その石の一つが、まぐれ当りに鷲のからだに当りました。さすがの鷲もそれには少し困つたところを、鶴はす早く逃げて、子良の近くにある小松のしげみに隠れてしまひました。
五
マアよい事をしたと思つて、子良《しりやう》は喜んで家《うち》に帰り誰《たれ》にも言はずにその日も暮れましたので、寝床に入つて眠《ね》ました。
しかし二三時間も経《た》つと、誰やら女の声で御免なさい/\と言つて、雨戸をたゝく者がありますから、目を醒《さ》まして明けてみますと、其処《そこ》に昼間たすけてやつた鶴《つる》が立つてゐました。
「先程はどうも大変な御助けを受けまして何とも御礼の申し様もございません。」と、鶴は丁寧に頭を下げて言ひました。
「実は私《わたし》は貴下のお母様《かあさん》から言ひつかつて、天へお迎へに来ましたが、鷲《わし》の為めにサン/″\羽や身体《からだ》をいためられて、自分だけ低い空をとぶのがやつとでございます。ですから貴下を背負《おんぶ》してあの高い天の御殿などにはもう迚《とて》もいかれませんけれども此儘《このまま》にして置いては私の役目が果
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